前の話はおいといて、今回は私が好きな小説家の一節を紹介したいと思います。
「温泉と旅館は切って離せない関係にある。温泉といえば旅館、旅館といえば温泉、とまあ、普通はなりますよね。旅行地に大きなホテルがあって、そこの浴場は温泉を使ってますといわれても、それは温泉じゃなくてやっぱり大浴場にしか見れない。温泉の厳密な定義でいくとそれも温泉なんだろうけれども、それはみんなの持つ温泉のイメージとは異なる。温泉は、風情があって、ちょっと物悲しくて、という、日本のわびさびを兼ね備えたものでないといけない。そういうことを考えていると、やっぱり温泉と旅館はセットとなってしまうんだ。ヨーロッパのある国では温泉が結構主流だが、それは日本人から見ると「spa」であって、決して温泉ではないのである。それは向こうの人達が裸で風呂に入らない、ということに起因しているのかもしれない。裸で風呂に入る、それはひと目に付く可能性がある、というのはすごく不思議な感覚だろう。どんなに金を持っている奴でも、金を持っていない奴でも、温泉に入るときは裸にならなければならない。なんというシステムであろう。すべてを平等に扱うというこのルールは、東洋思想から着ているのではないかと私は考える。全ては一つであり、一つがすべて。そして、それを体現するのが温泉というシステムなのである。画期的だ。日本人が好きなのも無理はなく、外国人に理解出来ないのもわかってしまう。旅館のない温泉、温泉のない旅館。いや温泉のない旅館はもはや旅館ではないのではないだろうか。どんどん頭がこんがらがってきた。難しく考え過ぎなのかなあ。もっとシンプルに行こう。温泉には、旅館が欠かせない。そして、私はそんな素敵な温泉というものを、そしてその温泉というものを生み出した日本を愛する。」
